千葉県で外国人の不法就労が多い理由|通報制度よりも事業者の確認体制が重要です
千葉県で外国人の不法就労が多い理由|通報制度よりも事業者の確認体制が重要です
不法就労対策は、外国人を一律に疑うことではありません。地域の産業構造、人手不足、雇用管理の実態を踏まえ、事業者が在留資格と就労範囲を正確に確認する体制を整えることが重要です。
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朝日新聞が「千葉の外国人不法就労なぜ多い?」というテーマを取り上げました。隣県の茨城県では、不法就労を助長する事業者等に関する通報報奨金制度が始まる一方、千葉県は同様の制度について慎重な姿勢を取っていると報じられています。
この問題は、単に「外国人が多いから不法就労が多い」という話ではありません。千葉県の産業構造、農業・製造・物流・建設などの人手不足、そして事業者側の在留資格確認体制の問題として整理する必要があります。
千葉県で外国人の不法就労が多い背景
出入国在留管理庁が公表した「令和7年における入管法違反事件」によると、令和7年中に退去強制手続等を執った外国人のうち、不法就労事実が認められた者は1万3,435人でした。就労場所別では茨城県が3,518人で最多とされ、関東地区1都6県で全体の大きな割合を占めています。
千葉県で外国人の不法就労が多い背景には、まず外国人労働者数そのものの多さがあります。千葉労働局によると、令和7年10月末時点の千葉県内の外国人労働者数は105,829人、外国人労働者を雇用する事業所数は16,735所です。
産業別では、製造業、卸売業・小売業、サービス業などが上位にあります。さらに、建設業、宿泊業・飲食サービス業、農業、倉庫・物流関連の現場でも、外国人材の需要が高まりやすい地域です。
農業・現場労働・物流の需要が大きい
千葉県は全国有数の農林水産県でもあります。落花生、えだまめ、かぶ、マッシュルーム、日本なしなど、全国上位の品目が多く、季節的な繁忙期に多くの人手が必要となる地域です。
農業、食品加工、建設、倉庫、物流などでは、短期的・季節的な人手不足が生じやすく、雇用確認が不十分なまま人を使ってしまうリスクがあります。これは外国人本人だけの問題ではなく、雇用する側、紹介する側、下請け・派遣・請負の構造にも関わる問題です。
また、千葉県には成田空港を中心とする航空物流圏があります。空港、倉庫、貨物取扱い、配送などの周辺業務では、外国人材の需要が高まりやすい一方で、実際の業務内容と在留資格の範囲が一致しているかを確認する必要があります。
茨城県の通報報奨金制度とは
茨城県では、不法就労を助長する事業者等に関する情報提供を受け付け、摘発につながった場合に報奨金を支払う制度が公表されています。制度上は、外国人個人を対象にするものではなく、不法就労を助長している事業者やブローカーに関する情報提供制度として説明されています。
通報内容としては、事業者名、事業所所在地、不法就労の場所、具体的な状況、根拠となる資料等が想定されます。また、通報者側にも氏名、住所、連絡先、本人確認書類の提出等が求められる設計です。
注意点:制度の目的が「不法就労を助長する事業者対策」であるとしても、実際の運用では、誤認通報や外国人住民への偏見につながらないよう慎重な配慮が必要です。
通報制度には賛否がある
不法就労を防止し、適正に働く外国人と適正に雇用する事業者を守るという目的自体は重要です。不法就労を放置すると、正規に働いている外国人まで不当な疑いを受ける可能性があり、適正な雇用管理をしている事業者との公平性も損なわれます。
一方で、通報報奨金制度には慎重な検討も必要です。在留資格や就労可否は、外見や国籍、勤務場所だけで判断できるものではありません。
たとえば、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などの身分系在留資格では、原則として就労制限がありません。留学生や家族滞在でも、資格外活動許可の範囲内であれば一定時間の就労が可能です。
また、特定活動の場合は、パスポートに添付された指定書を確認しなければ、具体的な活動範囲が分からないことがあります。特定技能や技能実習では、受入れ機関、分野、業務区分、実際の就労場所などの確認が必要です。
このように、外国人の就労可否は専門的な確認を要するため、制度の運用を誤ると、誤認通報や外国人住民への偏見につながるおそれがあります。
千葉県が静観することには一定の合理性がある
千葉県で不法就労が多いとしても、直ちに通報報奨金制度を導入すべきかは別問題です。特に、外国人本人を疑う空気が広がると、適法に働く外国人や、まじめに雇用管理をしている事業者にまで悪影響が及ぶ可能性があります。
不法就労対策の中心は、外国人個人を監視することではなく、事業者側が在留資格、就労範囲、在留期限、資格外活動許可、指定書、雇用状況届出を正確に確認することです。
その意味で、千葉県が通報報奨金制度について慎重な姿勢を取ることには、一定の合理性があります。必要なのは、外国人を排除することではなく、適正雇用の仕組みを強化することです。
事業者が確認すべきポイント
外国人を雇用する事業者は、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 在留カード表面に記載された在留資格、在留期間、就労制限の有無
- 在留カード裏面の資格外活動許可の有無
- パスポートに添付された指定書の内容
- 在留期限が切れていないか
- 実際の業務内容が在留資格の活動範囲に合っているか
- 特定技能・技能実習の場合、分野、業務区分、受入れ機関、就労場所が合っているか
- 派遣、請負、下請けの場合、実際に働く場所と業務内容を把握しているか
- 外国人雇用状況届出をハローワークに提出しているか
- 確認した資料の写しや確認記録を保存しているか
特に注意が必要なのは、「在留カードを見たから大丈夫」と考えてしまうケースです。在留カードだけでは、すべての就労可否を判断できない場合があります。特定活動の指定書、資格外活動許可、実際の業務内容、契約形態、就労場所まで確認しなければ、正確な判断ができないことがあります。
不法就労助長罪のリスク
外国人本人が不法就労になるだけでなく、事業者側にも不法就労助長罪のリスクがあります。不法就労であることを知らなかった場合でも、在留カードや在留資格の確認を十分に行っていなければ、過失があるとして責任を問われる可能性があります。
外国人雇用では、「紹介された人だから大丈夫」「同業者も雇っているから大丈夫」「本人が働けると言っているから大丈夫」という判断は危険です。事業者自身が、書類と実態を確認し、必要に応じて専門家に相談する体制を作ることが重要です。
まとめ:不法就労対策は、外国人排除ではなく適正雇用の問題です
千葉県で外国人の不法就労が多い背景には、外国人労働者の増加、農業・製造・建設・物流などの現場需要、そして事業者側の確認体制の問題があります。
不法就労対策は必要です。しかし、それは外国人を一律に疑うことではありません。適法に働く外国人を守り、適正に雇用する事業者を守るためには、雇用する側が在留資格と就労範囲を正確に確認することが不可欠です。
通報制度の是非だけに注目するのではなく、事業者が日常的に確認できる仕組みを整えることこそ、実務上もっとも重要な不法就労対策です。
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外国人を雇用する前、または既に雇用している外国人の在留資格に不安がある場合は、早めに専門家へご相談ください。