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日本の在留手数料値上げは本当に重いのか?
米国・カナダ・豪州・ドイツ・英国と比較
日本の在留資格変更・更新・永住許可の手数料は、今後引き上げられる可能性があります。ただし、日本の現行制度は、申請時ではなく「許可されるとき」に納付する仕組みです。金額だけでなく、支払時点、不許可時の扱い、家族・企業への影響から比較します。
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Read the English version結論から言うと、日本は「在留手続の政府手数料が非常に安い国」とは言いにくくなる可能性があります。しかし、海外主要国と比較すると、日本には「許可時納付型」という重要な特徴があります。
現行制度では、在留資格変更・更新・永住許可の手数料は、原則として許可されるときに納付します。
不許可時の政府手数料リスクよりも、許可後にまとまった費用を準備する負担が問題になります。
外国人本人だけでなく、受入企業にとっても更新費用・永住申請費用の扱いが実務上の課題になります。
1.日本の在留手数料は、現在「許可時納付型」
日本の在留資格変更許可申請と在留期間更新許可申請では、現行制度上、手数料は「許可されるとき」に納付します。金額は窓口申請で6,000円、オンライン申請で5,500円です。永住許可申請も同じく、申請時ではなく「許可されるとき」に10,000円を納付します。
この点は、海外主要国との比較で非常に重要です。日本では、少なくともこれらの手続については、申請時に政府手数料を払い、不許可でもその手数料を失うという構造ではありません。
参考:出入国在留管理庁の案内では、在留資格変更・在留期間更新は「許可されるときは6,000円」、オンライン申請は5,500円、永住許可は「許可されるときは10,000円」とされています。
2.日本の手数料引上げ予定で何が変わるのか
2026年3月10日に閣議決定された入管法改正案では、在留資格変更の許可等に係る手数料上限額を引き上げる措置が含まれています。これは、直ちに全ての手数料が上限額まで上がるという意味ではなく、実際の金額は今後、政令等で定められることになります。
この値上げの影響は、「不許可になったときに政府手数料を失うリスクが増える」というよりも、「許可後、在留カードを受け取る段階で、本人・家族・企業がまとまった費用を準備しなければならなくなる」という点にあります。
注意:現時点では、最終的な徴収額や施行時期は確定情報と未確定情報を分けて見る必要があります。「永住許可が必ず30万円になる」と断定するのではなく、「法定上限額を引き上げる方向」と整理するのが安全です。
3.海外主要国との比較:金額だけでなく「いつ払うか」が重要
海外就労先として比較されやすい米国、カナダ、豪州、ドイツ、英国では、申請時に処理料や visa application charge を支払い、不許可でも返金されない部分が多くあります。日本の手数料が上がっても、この「支払時点」と「不許可時の扱い」は大きな違いとして残ります。
| 国・地域 | 主な支払時点 | 不許可時の扱い | 実務上の見方 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 現行は許可時 | 不許可なら変更・更新・永住の収入印紙代は通常発生しない | 値上げ後も、許可時負担型という特徴が残る可能性があります。 |
| 米国 | 申請・petition・ビザ申請時 | USCIS filing fee や国務省の visa application processing fee は原則返金不可 | 金額だけでなく、不許可・不選択・取下げ時の費用リスクが大きい制度です。 |
| カナダ | 申請時 | processing fee・biometric fee は返金不可。Open Work Permit holder fee は拒否時返金 | 処理料型ですが、一部の費用には返金制度があります。 |
| 豪州 | 第1回分は申請時、第2回分は許可前 | 第1回分は通常返金なし。第2回分は未納なら不要 | 分割型ですが、申請時の費用負担は明確に発生します。 |
| ドイツ | 申請時 | 原則として処理料型 | 金額は比較的低めでも、日本の許可時納付型とは性質が異なります。 |
| 英国 | 申請時 | application fee は戻らない場面が多く、IHSは拒否時返金 | application fee と医療サーチャージを分けて見る必要があります。 |
4.米国・カナダ・豪州・ドイツ・英国の特徴
米国:申請時・petition時の不返金負担が重い
米国では、USCISの filing fee は、申請や petition の結果にかかわらず原則返金不可とされています。H-1Bで使われる Form I-129 の手数料も高額で、さらに国務省の petition based visa categories では non-refundable application processing fee が設定されています。
USCIS Fee Rule FAQ / U.S. Visa Fees|travel.state.gov
カナダ:処理料型だが一部返金あり
カナダの Work Permit では、work permit processing fee、open work permit holder fee、biometric fee が関係します。processing fee と biometric fee は最終判断にかかわらず返金されませんが、Open Work Permit holder fee は拒否時に返金されるとされています。
Applying for a Work Permit outside Canada|Canada.ca
豪州:第1回分が申請時、第2回分が許可前
豪州の Visa Application Charge は、第1回分が申請時、第2回分が該当する場合に許可前に支払う仕組みです。第1回分は、不許可や取下げでも通常返金されません。
Explanation of visa application charges|Australian Government / Refunds|Australian Government
ドイツ:金額は低めだが処理料型
ドイツの national visa は通常75ユーロです。金額自体は極端に高くありませんが、申請処理料として扱われ、拒否時に返金されない案内がされています。
§ 46 Aufenthaltsverordnung|gesetze-im-internet.de
英国:application fee と IHS を分けて見る
英国 Skilled Worker visa では、application fee と Immigration Health Surcharge が大きな負担になります。IHSは拒否時に返金される制度がありますが、application fee は戻らない場面が多く、初期費用の重さが特徴です。
5.家族・企業への影響は大きい
日本の手数料が上がった場合、単身者だけでなく、家族全員で更新する世帯や永住許可を同時に検討する家族には大きな影響があります。たとえば、家族4人で更新する場合、1人ごとの手数料が上がれば、合計額は一気に大きくなります。
また、外国人を雇用する企業にとっても、在留資格の更新費用や変更費用を本人負担にするのか、会社が補助するのか、一部負担にするのかを整理する必要があります。特定技能、介護、外食、宿泊、建設、運送など、外国人材の確保が重要な分野では、手数料負担の扱いが採用競争力に影響する可能性があります。
6.結論:日本は「安い国」から「許可時にまとまった費用を払う国」へ
日本の在留手数料が引き上げられれば、日本は「在留手続の政府手数料が非常に安い国」とは言いにくくなります。特に、短い在留期間で更新を繰り返す人、家族全員で更新する世帯、永住許可を目指す人にとっては、許可時にまとまった費用を準備する必要が出てきます。
もっとも、日本の現行制度では、在留資格変更、在留期間更新、永住許可の手数料は、申請時ではなく許可されるときに納付します。この点は、申請時に処理料を支払い、不許可でも返金されない部分が多い米国・カナダ・豪州・ドイツ・英国とは大きく異なります。
したがって、日本の値上げの影響は、「不許可時に高額な政府手数料を失うリスクが増える」というよりも、「許可後に在留カードを受け取る段階で、本人・家族・企業がまとまった費用を準備しなければならなくなる」という点にあります。
在留資格変更・更新・永住許可の準備は早めに
在留資格変更、更新、永住許可を検討している方は、手数料の金額だけでなく、許可可能性、在留期間、家族人数、勤務先の協力体制を含めて準備することが重要です。
トミーズリーガルサービス行政書士事務所では、外国人本人・受入企業の双方の事情を確認しながら、在留資格手続の準備をサポートしています。