2026年衆院選後に考える「外国人政策・移民政策」|在留資格制度と実務への影響
在留資格申請・外国人雇用・特定技能支援
IMMIGRATION POLICY UPDATE
2026年衆院選後に考える「外国人政策・移民政策」|在留資格制度と実務への影響
選挙は終わっても、外国人材の受入れ、在留管理、永住、難民・補完的保護、地域共生をめぐる議論は続きます。本記事では、政治的な賛否ではなく、行政書士実務の目線から、企業と外国人本人に関係しやすい論点を整理します。
- 選挙後も続く外国人政策の議論
- 「移民政策」と「在留資格制度」の違い
- 外国人材受入れ、在留管理、永住、難民・補完的保護、地域共生の論点
- 企業と外国人本人が今確認すべきこと
- 今後の制度・実務運用への備え
1.選挙は終わっても、外国人政策の議論は続く
2026年2月8日に実施された衆議院議員総選挙では、経済政策、物価高対策、安全保障などと並び、外国人材の受入れ、在留管理、地域共生、難民・庇護、永住・帰化などに関する議論も注目されました。
選挙期間中は、「移民」「外国人」「治安」「人手不足」「共生」といった言葉が一括りに使われることがあります。しかし、行政書士実務の目線では、これらは本来、制度ごとに分けて考える必要があります。
- 就労・外国人雇用の問題
- 特定技能・育成就労など人手不足分野の受入れ問題
- 永住・定住・家族帯同の問題
- 難民・補完的保護など庇護の問題
- 不法滞在・退去強制・在留管理の問題
- 地域での日本語教育、生活支援、防災、医療、教育の問題
同じ「外国人政策」という言葉でも、対象となる制度、担当省庁、実務上の影響は大きく異なります。
2.まず前提:「移民政策」と「在留資格制度」は同じではない
日本では、外国人の受入れは主に「在留資格制度」を通じて管理されています。
たとえば、外国人が日本で働く場合でも、全員が同じ制度で扱われるわけではありません。技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能、経営・管理、家族滞在、永住者、日本人の配偶者等など、それぞれの在留資格ごとに、活動内容、就労可否、必要資料、審査の見方が異なります。
就労系在留資格、特定技能、育成就労、企業の雇用管理など。
家族滞在、定住者、永住者、日本人・永住者の配偶者等など。
難民認定、補完的保護、避難民支援など。
不法滞在、不法就労、退去強制、仮放免、届出、在留カード管理など。
この区別をしないまま議論すると、「外国人を受け入れるか、受け入れないか」という大きな話に見えます。しかし実務上は、「どの在留資格で、どの活動を、どの会社・地域・生活基盤で行うのか」が重要です。
3.2026年衆院選で見えた主な論点
論点1:人手不足と外国人材の受入れ
介護、建設、外食、宿泊、農業、製造業など、多くの現場で人手不足が続いています。このため、外国人材の受入れをどう設計するかは、企業にとって非常に実務的な問題です。
ただし、受入れ拡大だけを考えればよいわけではありません。業務内容が在留資格に合っているか、報酬が日本人と同等以上か、雇用契約書や労働条件通知書が適正か、特定技能の場合に支援計画・実施記録が整っているかなど、企業側の管理体制が問われます。
論点2:在留管理の厳格化と適正化
外国人政策では、受入れと同時に「ルールを守る在留管理」も議論されます。不法滞在、不法就労、虚偽申請、名義貸し、実態のない雇用契約などは、本人だけでなく、受入企業や関係者にも大きなリスクを生じさせます。
一方で、厳格化の議論では、単に取り締まりを強化するだけでなく、正しく生活し、働き、納税し、社会保険に加入している外国人が不利益を受けないようにする視点も重要です。
論点3:永住・帰化・長期滞在への影響
外国人政策の議論は、永住や帰化にも影響します。永住許可申請では、収入、納税、年金、健康保険、交通違反、扶養状況、家族構成、在留状況などが総合的に確認されます。
今後、在留管理や社会保障負担の適正化が重視される流れが強まれば、永住や長期滞在の審査でも、生活基盤や公的義務の履行状況がより丁寧に見られる可能性があります。
論点4:難民・補完的保護・庇護制度
難民や補完的保護に関する議論では、「保護すべき人を適切に保護すること」と「制度の濫用を防ぐこと」の両方が論点になります。
この分野は、感情的な議論になりやすい一方で、個別事情、出身国情勢、迫害理由、証拠資料、申請経緯などを丁寧に確認する必要があります。単に「厳しくする」「広げる」という二分法ではなく、保護の必要性、手続の公正性、制度の信頼性をどう両立させるかが問われます。
論点5:地域共生、日本語教育、防災、生活支援
外国人政策は、入管の窓口だけで完結するものではありません。外国人住民は地域で生活し、働き、子どもを学校に通わせ、病院に行き、災害時には避難情報を受け取る必要があります。
そのため、地域共生の観点では、日本語教育、子どもの就学支援、多言語相談窓口、医療・保険制度の理解、住居確保、防災情報の多言語化、企業・自治体・支援機関の連携が重要になります。
4.企業が今確認すべきこと
外国人を雇用している企業、これから採用を考えている企業は、政治的な議論そのものよりも、まず自社の実務体制を確認することが重要です。
- 在留カードの期限管理ができているか
- 業務内容と在留資格が合っているか
- 雇用契約書・労働条件通知書が整っているか
- 給与水準が適正か
- 社会保険・雇用保険の加入状況に問題がないか
- 転職者について前職・現職の説明資料が整理できるか
- 特定技能の場合、支援計画と実施記録が整っているか
- 外国人本人への説明が日本語だけで一方的になっていないか
外国人雇用では、入管手続、労務管理、社会保険、税務、生活支援が重なります。制度変更が起きる前から、書類と実態を一致させておくことが大切です。
5.外国人本人が今確認すべきこと
外国人本人にとっても、政策議論は遠い話ではありません。更新、転職、家族帯同、永住、帰化を考えている場合、次の点を早めに確認しておくと安心です。
- 在留期限はいつか
- 現在の仕事は在留資格に合っているか
- 転職予定がある場合、届出や説明資料は必要か
- 税金・年金・健康保険に未納や遅れがないか
- 家族を扶養している場合、収入とのバランスを説明できるか
- 永住申請を考える場合、過去数年分の資料を整理できるか
- 追加資料通知が来たとき、期限内に対応できるか
特に永住や長期滞在を考える場合、直前に資料を集めるだけでは対応が難しいことがあります。普段から、納税、年金、保険、勤務実態、収入資料を整えておくことが大切です。
6.今後の見通し:制度変更より先に「実務の精度」が問われる
外国人政策は、今後も選挙や社会情勢に応じて議論が続く分野です。
ただし、現場で最初に影響が出るのは、法律の大改正だけではありません。審査で確認される資料、説明を求められるポイント、企業側の管理体制、オンライン申請時の添付資料など、実務運用の変化として表れることもあります。
そのため、企業や外国人本人にとって重要なのは、制度名だけで判断せず、自分・自社に関係する論点を分けて整理し、申請前から資料と実態を一致させることです。
7.当事務所のサポート
トミーズリーガルサービス行政書士事務所では、外国人本人、受入企業、登録支援機関、特定技能関係者向けに、在留資格申請、更新・変更、永住、外国人雇用管理、特定技能支援体制の整理をサポートしています。
外国人を採用する前の在留資格確認、更新期限が近い場合、転職・職務変更がある場合、特定技能の支援記録に不安がある場合、永住申請に向けて税金・年金・社会保険を確認したい場合は、早めの確認をおすすめします。