企業内転勤の審査厳格化|海外勤務実態と海外事業所の実体確認が重要に
企業内転勤の審査が厳格化へ
2026年4月24日、共同通信は、出入国在留管理庁が在留資格「企業内転勤」の審査を厳格化し、来日前の勤務実態を把握できる公的資料などの提出を必要とする運用に変更したと報じました。
報道によれば、2026年4月1日から、企業内転勤の審査では、外国での社会保険加入証明、外国事業者の法人登記、納税状況など、海外での勤務実態や海外事業所の実体を確認する資料が求められるようになったとされています。
これは、企業内転勤という在留資格そのものがなくなる、または利用できなくなるという意味ではありません。重要なのは、「本当に海外事業所から日本事業所への転勤なのか」を、より客観的な資料で説明する必要が高まったという点です。
企業内転勤とは何か
在留資格「企業内転勤」は、外国にある本店、支店、その他の事業所の職員が、日本にある本店、支店、その他の事業所に、期間を定めて転勤し、日本で「技術・人文知識・国際業務」に相当する活動を行うための在留資格です。
典型例としては、海外本社から日本支店への転勤、海外子会社から日本親会社への出向、海外関連会社から日本法人への出向などが考えられます。
ただし、企業内転勤は、単に外国人を日本で雇用するための便利な制度ではありません。制度の本質は、海外事業所で既に勤務している社員を、企業グループ内または一定の関係性のある事業所間で、日本へ転勤させることにあります。
今回の変更で何が見られるようになるのか
これまでの実務では、在職証明書、転勤命令書、会社案内、決算書などを中心に、海外勤務歴や転勤の必要性を説明することが多くありました。
しかし、今後はそれだけでは不十分になる可能性があります。特に、次のような点について、より客観的な資料が求められる可能性があります。
- 海外事業所が実在しているか
- 海外事業所に事業実態があるか
- 申請人が本当に海外で勤務していたか
- 海外での勤務内容が専門的業務であったか
- 日本側事業所との関係性が明確か
- 日本で行う業務が「技術・人文知識・国際業務」に相当するか
特に、外国法人の登記資料、納税資料、社会保険加入資料、給与支払資料、取引実績資料、組織図、勤務記録などは、今後さらに重要になると考えられます。
影響を受けやすい企業
今回の厳格化は、すべての企業に同じ程度の影響を与えるわけではありません。特に注意が必要なのは、次のようなケースです。
| 企業・案件の類型 | 注意点 |
|---|---|
| 中小企業・新設法人 | 日本側事業所の受入体制、事業計画、事務所実体の説明が重要になります。 |
| 海外関連会社との関係が複雑な会社 | 資本関係、支配関係、取引関係、人的関係だけでなく、実質的な一体性の説明が必要です。 |
| 貿易・中古車輸出入業者 | 海外拠点、取引先、輸出入実績、船荷証券、インボイス等との整合性が重要です。 |
| IT・オフショア開発会社 | 海外でのプロジェクト実績、担当業務、開発体制、職務内容の専門性を整理する必要があります。 |
| 海外事業所の実体が弱い会社 | 形式的な登記だけではなく、実際の事業活動、雇用、納税、取引の有無が問題になります。 |
注意すべき「企業内転勤を使った採用スキーム」
近年、一部では、企業内転勤を通常の外国人採用の代替手段のように説明する勧誘が見られます。
たとえば、次のような説明には注意が必要です。
- 海外に事業所がなくても、関連企業や団体を介せば企業内転勤で採用できる
- 特定技能より安く外国人を採用できる
- 企業内転勤なら原則転職できないので安定雇用になる
- 人数制限なく採用できる
- 退職者が出た場合に交代要員を補償する
このような説明のすべてが直ちに違法というわけではありません。しかし、企業内転勤は、あくまで実体ある海外事業所からの転勤であることが前提です。
単に外国人材を日本企業へ供給するために、形式上だけ海外関連会社や団体を介在させるような仕組みは、制度趣旨との整合性が問題になります。入管審査においても、今後はこの点がより厳しく見られる可能性があります。
企業が準備すべき資料
1.海外事業所に関する資料
- 海外法人の登記資料
- 海外事業所の所在地を示す資料
- 海外での納税資料
- 海外での社会保険・労働保険に関する資料
- 海外事業所の写真、賃貸借契約、事務所資料
- 主要取引先、取引実績、請求書、契約書、輸出入資料
2.申請人本人に関する資料
- 履歴書
- 在職証明書
- 給与明細、給与支払証明
- 社会保険加入証明
- 勤務記録、担当プロジェクト資料
- 海外での職務内容を説明する資料
3.日本側事業所に関する資料
- 登記事項証明書
- 会社案内
- 決算書または事業計画書
- 事務所の賃貸借契約書
- 事務所写真、組織図
- 受入後の職務内容説明書
技術・人文知識・国際業務との違い
企業内転勤で行う活動は、「技術・人文知識・国際業務」に相当する活動です。したがって、日本で行う業務が単純作業や現場作業に近い場合、企業内転勤としても許可されにくくなります。
一方で、企業内転勤には、技術・人文知識・国際業務と異なり、学歴や職歴要件の考え方が異なる部分があります。そのため、企業によっては企業内転勤を検討したくなる場面があります。
しかし、ここで重要なのは、企業内転勤は「学歴要件を回避するための制度」ではないということです。海外での勤務実態、事業所間の関係性、日本での業務内容が整っていなければ、企業内転勤としての説明は困難になります。
当事務所の見解
今回の審査厳格化は、外国人材の受入れを一律に否定するものではありません。むしろ、制度趣旨に合った適正な受入れと、制度を抜け道的に利用する申請を区別する方向に進んでいると考えられます。
企業内転勤は、適切に使えば、海外拠点と日本拠点を持つ企業にとって有効な在留資格です。海外で経験を積んだ社員を日本に呼び、専門性を活かして勤務してもらうことは、国際的な事業展開にとって重要です。
一方で、実質的には日本企業による新規採用であるにもかかわらず、形式上だけ企業内転勤として申請することは、大きなリスクがあります。追加資料の提出、審査長期化、不許可だけでなく、受入企業や申請取次者の信用にも影響する可能性があります。
まとめ
企業内転勤の審査では、今後、海外勤務実態と海外事業所の実体確認がますます重要になります。
申請前に確認すべき事項は、海外法人・海外事業所の存在、本人の1年以上の勤務実態、日本側事業所との関係性、日本での職務内容が技人国に相当するか、などです。
企業内転勤は、外国人採用の抜け道ではありません。制度趣旨に合った本来の転勤であるかどうかを、申請前に慎重に確認する必要があります。
トミーズリーガルサービス行政書士事務所では、企業内転勤、技術・人文知識・国際業務、経営・管理、特定技能など、外国人雇用に関する在留資格の選択と申請準備をサポートしています。企業内転勤の利用を検討されている企業様は、申請前に資料の整合性を確認することをおすすめします。

