2026年最新:日本の難民制度の運用はどう変わったか|難民認定・補完的保護・人道配慮・特定活動の違い

日本の難民制度は、近年大きく運用が変化しています。特に、2023年12月に補完的保護対象者認定制度が開始され、2025年には「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」が公表されたことで、難民申請、補完的保護、人道配慮、特定活動の位置づけを正確に理解する必要性が高まっています。

この記事では、2026年時点で公表されている最新情報をもとに、日本の難民制度の実態と、本人側・国側双方の将来的負担やリスクを整理します。

1.最新統計から見る日本の難民制度

出入国在留管理庁が公表した令和7年、つまり2025年の統計によれば、難民認定申請者数は11,298人でした。その一方で、難民と認定された人は187人です。

また、補完的保護対象者として認定された人は474人、人道的な配慮により在留を認められた人は525人であり、難民認定、補完的保護、人道配慮を合わせると、2025年に日本での在留を認められた人は合計1,186人とされています。

区分 2025年の人数 実務上の意味
難民認定申請者 11,298人 申請者数は引き続き1万人を超える水準
難民認定者 187人 難民認定は限定的
補完的保護対象者 474人 紛争避難民等を保護する制度として重要性が増加
人道配慮による在留許可 525人 難民・補完的保護には該当しないが、個別事情により在留を認める枠

単純に「難民認定者数」だけを見ると、日本の難民制度は非常に狭い制度に見えます。しかし実務上は、難民認定だけでなく、補完的保護、人道配慮、特定活動を含めて、全体の運用を見る必要があります。

紛争や迫害から避難する人々を連想させる難民保護のイメージ
難民制度は、迫害や紛争などにより本国へ帰ることが困難な人をどのように保護するかという制度です。

2.難民認定・補完的保護・人道配慮・特定活動の違い

日本の難民関連制度を理解するうえでは、次の4つを区別することが重要です。

区分 本人側の安定性 国側の将来負担 特徴
難民認定 最も高い 最も重い 国際保護としての法的地位が明確
補完的保護 高い 難民認定に近い 難民条約上の難民ではないが、帰国させるべきでない人を保護
人道配慮 中程度 個別に調整可能 家族、病気、長期在留、本国情勢などを個別考慮
特定活動 不安定になりやすい 短期管理しやすい 活動内容・就労可否は指定書による

3.難民認定は「長期定住」を前提とする強い保護

難民認定を受けた場合、原則として在留資格「定住者」が付与されます。また、永住許可要件の一部緩和、難民旅行証明書、定住支援プログラムなど、長期的に日本で生活するための制度上の利益があります。

本人にとっては最も安定した保護です。一方で、国側から見ると、難民認定は法的・国際的・社会的な責任を伴います。国が「この人は本国に帰すべきではない」と正式に認めることになるため、将来的な送還は極めて困難になります。

そのため、難民認定は、本人にとっては強い保護である一方、国側にとっては定住支援、生活基盤形成、社会統合、外交上の配慮などを伴う重い判断です。

4.補完的保護は「難民ではないが保護すべき人」のための制度

補完的保護対象者認定制度は、2023年12月1日に開始されました。これは、難民条約上の5つの迫害理由には該当しないものの、紛争避難民など、帰国させることが適切でない人を保護するための制度です。

補完的保護対象者にも、原則として在留資格「定住者」が付与され、永住許可要件の一部緩和や定住支援プログラムの対象となる可能性があります。そのため、本人側の安定性は難民認定にかなり近いといえます。

ただし、補完的保護は「難民」と認める制度ではありません。国側から見ると、難民認定ほど強い政治的・外交的意味を持たせずに、帰国困難者を保護できる制度ともいえます。

5.人道配慮は柔軟だが、本人にとっては不安定さもある

人道配慮は、難民にも補完的保護対象者にも該当しない場合でも、個別事情を考慮して在留を認める運用です。たとえば、家族関係、子どもの就学、病気、長期在留、本国情勢などが考慮されることがあります。

国側から見ると、人道配慮は柔軟な制度運用です。難民認定や補完的保護のように強い法的地位を与えず、個別事情に応じて在留資格や在留期間を調整できるからです。

しかし本人側から見ると、難民認定や補完的保護ほど安定しません。なぜ在留が認められているのかという根拠が個別事情に依存するため、その事情が変化すると、次回更新時にリスクが生じる可能性があります。

6.特定活動は「一時的管理」の性格が強い

在留資格「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を行うための在留資格です。そのため、同じ「特定活動」でも、指定書の内容によって、就労できる場合とできない場合があります。

難民申請中、不認定後、出国準備期間中などに特定活動となるケースでは、本人の生活は不安定になりやすいです。在留期間が短く、就労の可否も制限されることがあり、雇用、住居、金融取引、将来の在留資格変更にも影響する場合があります。

国側から見ると、特定活動は短期的には管理しやすい制度です。しかし、特定活動が長期化すると、本人は日本で生活基盤を形成していく一方で、法的には不安定なままという矛盾が生じます。

7.2025年以降の大きな変化:ゼロプランとB案件の類型化

2025年5月23日、出入国在留管理庁は「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を公表しました。この中で、誤用・濫用的な難民認定申請を抑制するため、B案件の類型化、在留制限、難民審査の迅速化などが示されています。

B案件とは、難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張している案件を指します。難民申請をすれば必ず在留を継続できる、あるいは必ず働けるという理解は、現在では非常に危険です。

また、改正入管法により、3回目以降の難民申請者などについては、一定の場合、難民申請中であっても送還停止効の例外に該当し得ます。複数回申請を行えば送還を止められるという時代ではなくなっています。

8.本人側のリスク:難民申請を安易な在留継続手段にしない

難民申請は、本来、迫害のおそれがある人を保護するための制度です。就労や在留期間を延ばすための手段として利用すると、将来の在留審査で不利に評価される可能性があります。

特に、次のようなケースでは慎重な判断が必要です。

  • 難民申請の理由が、経済的困難や就職目的に近い場合
  • 前回申請と同じ理由で再申請を繰り返している場合
  • 出国準備期間中に、根拠の弱い難民申請を検討している場合
  • 難民不認定後に、技人国、経営管理、特定技能などへの変更を考えている場合
  • 本人の供述と提出資料に矛盾がある場合

難民性が弱い場合には、無理に難民申請を続けるよりも、就労系、身分系、特定技能、経営管理、家族関係、人道配慮など、別の在留可能性を冷静に検討することが重要です。

パスポートを持つ人物と在留資格手続のイメージ
難民申請中・不認定後の相談では、実際の資料を確認し、他の在留資格への再構築可能性も検討する必要があります。

9.国側の負担とリスク:保護と管理のバランス

国側から見ると、難民認定や補完的保護は、本人に安定した地位を与える一方で、長期定住を前提とする社会的・財政的負担を伴います。

そのため、国は、個別迫害が明確な場合には難民認定、紛争避難民などには補完的保護、その他の帰国困難事情には人道配慮や特定活動という形で、保護と管理を分けようとしていると考えられます。

ただし、帰国できない人を長期間不安定な特定活動のまま置くことは、本人にも社会にも負担を生じさせます。就労不安、生活困窮、不法就労化、行政コストの増加というリスクがあるため、真に保護が必要な人については、一定時点で安定した在留地位を検討することも重要です。

10.当事務所の実務対応方針

トミーズリーガルサービス行政書士事務所では、難民申請を安易に勧めることはしません。特に、退去強制、収容、仮放免、訴訟、複数回の難民申請が関係する場合には、弁護士との連携が必要となることがあります。

一方で、次のような相談については、在留資格の再検討という観点から、資料確認と初期相談を行う余地があります。

  • 難民申請中だが、今後の在留資格を見直したい場合
  • 難民不認定後、他の在留資格への変更可能性を確認したい場合
  • 出国準備期間中に、合法的な在留可能性を整理したい場合
  • 就労系在留資格、身分系在留資格、特定技能、経営管理などへの再構築を検討したい場合
  • 勤務先、家族関係、本国情勢、過去の申請経緯を整理したい場合

難民制度は、本人の人生に大きく影響する制度です。申請前、再申請前、不認定後のいずれの段階でも、まずは資料と事実関係を確認し、難民申請に依存しない合法的な選択肢があるかを検討することが重要です。

ご相談について

難民申請中・難民不認定後・出国準備期間中の在留資格再検討については、個別事情の確認が不可欠です。パスポート、在留カード、申請書控え、通知書、不許可理由に関する資料、勤務先資料、家族関係資料などを確認したうえで、対応可能性を検討します。

退去強制、収容、仮放免、訴訟等が関係する場合には、弁護士との連携又は弁護士相談をお勧めすることがあります。

参考情報