在留手数料は本当に「1年3万円・3年6万円」になるのか――入管庁提示額と政府の狙いを読む
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Will Residence Application Fees in Japan Really Rise to ¥30,000 for 1-Year Permits and ¥60,000 for 3-Year Permits?
2026年4月、在留手続手数料の大幅引上げに関する報道が相次ぎました。とくに注目を集めたのは、出入国在留管理庁が国会審議の中で、在留期間1年で約3万円、3年で約6万円という新たな目安を示したとされる点です。
もっとも、ここで注意が必要です。これらの金額は、現時点で既に確定・施行された額ではありません。 現在進んでいるのは、まず法律で手数料の上限額を引き上げ、その後、具体的な額を政令で定めるという流れです。したがって、現時点で直ちに「更新は3万円になった」と案内するのは正確ではありません。
報道のポイント
今回報じられているのは、在留手続手数料の新たな目安です。報道ベースでは、概ね次のような水準が示されています。
- 3か月以下:1万円程度
- 1年:3万円程度
- 3年:6万円程度
- 5年:7万円程度
- 永住許可:20万円程度
現行では、在留資格変更許可・在留期間更新許可は窓口申請で6,000円、オンライン申請で5,500円、永住許可は1万円です。仮に報道どおりの水準で制度化されれば、依頼者の負担感はかなり大きく変わります。
まだ「確定額」ではないことが重要です
今回の法改正案は、在留資格変更許可や在留期間更新許可の手数料上限を10万円、永住許可の手数料上限を30万円へ引き上げる内容です。しかし、これはあくまで上限額です。実際にいくら徴収するかは、法改正後に政令で定められる予定です。
そのため、実務上は次のように整理して案内するのが安全です。
- 報道されている金額は「目安」であり、まだ確定額ではない
- 施行までは、現行の法定手数料が前提である
- ただし、大幅引上げの方向性自体はかなり強い
法案の核心は「実費」だけではない
今回の改正案で特に重要なのは、手数料額を決める際の考え方です。条文上は、単なる窓口処理の実費だけでなく、外国人の適正な在留の確保に関する事務費、適法に在留する外国人が安定的かつ円滑に在留できるようにするための支援事務費、さらに外国人の出入国及び在留の公正な管理に要する費用や、諸外国の同種手数料額も考慮要素に入っています。
これは非常に重要です。つまり政府は、申請1件ごとの単純な処理コストだけでなく、在留審査・在留管理・支援体制を含めた入管行政全体のコストを、より広く手数料に反映させる方向を打ち出していると読めます。
政府の狙いは何か
今回の引上げ方針は、単なる値上げではなく、外国人政策全体の再設計の一部と見るべきです。少なくとも、次の3つの意図があると考えられます。
1.財源確保
政府の説明の中心にあるのは、いわゆる受益者負担です。在留外国人に関する審査、管理、情報連携、制度整備、支援体制には相応の費用がかかります。政府は、その費用の一部を一般財源だけでなく、在留手続の手数料でも賄いたいと考えているとみられます。
2.在留管理の厳格化
今回の議論は、手数料だけで独立しているわけではありません。入管行政のDX、在留審査の厳格化、不法滞在対策、情報連携の強化などと一体で語られています。したがって、今回の手数料引上げは、単なる歳入増ではなく、管理体制を厚くし、審査や監督をより厳格化する政策群の一部として位置付けられていると考えられます。
3.政治的メッセージ
政府は、外国人の受入れが必要な分野がある一方で、一部の外国人によるルール逸脱や制度の不適正利用に対し、国民が不安や不公平感を抱いていることにも言及しています。その文脈でみると、今回の値上げは、「受け入れるが、管理は甘くしない」という国内向けメッセージの意味も持っているといえるでしょう。
実務への影響
もし今後、報道どおりの水準で制度化されれば、依頼者が気にするのは行政書士報酬だけではなく、むしろ法定手数料そのものになります。たとえば更新や変更のたびに数万円単位の法定費用がかかるとなれば、本人・家族・受入企業の資金計画に与える影響は小さくありません。
また、更新1回ごとの負担が重くなることで、在留期間の長短に対する意識も変わる可能性があります。どのような許可期間を得られるかが、これまで以上に経済的意味を持つことになるかもしれません。
現時点での実務的な案内の仕方
現時点では、次のように整理して案内するのが適切だと思われます。
- 現在適用されているのは、2025年改定後の現行手数料である
- 報道の「1年3万円・3年6万円」は、国会審議で示された目安であり、まだ確定額ではない
- ただし、法改正と政令改正を通じて、今後大幅に引き上げられる可能性は高い
とくに永住、更新、変更案件では、依頼者が報道だけを見て誤解していることもあり得ます。したがって、「既に決まった話」と「これから決まる話」を分けて説明することが重要です。
まとめ
今回の報道で本当に重要なのは、「1年3万円」「3年6万円」という数字そのものだけではありません。より本質的なのは、政府が外国人政策について、管理・審査・支援にかかるコストを、従来よりも広く受益者負担化しようとしている点です。
つまり今回の動きは、単なる値上げではなく、財源確保、在留管理の厳格化、そして国内向けの政治的メッセージが重なった政策転換として理解するべきでしょう。今後、法案成立後に政令で具体額がどのように定まるかを、引き続き注視する必要があります。
English version is here:
Will Residence Application Fees in Japan Really Rise to ¥30,000 for 1-Year Permits and ¥60,000 for 3-Year Permits?
投稿者プロフィール

- 行政書士 (Immigration Lawyer)
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日系理化学機器輸入商社、日系センサーメーカー、外資系真空機器メーカー、外資系化学装置メーカーでの国内外業務を経て、令和2年度行政書士試験に合格。令和3年4月、トミーズリーガルサービス行政書士事務所を開業。
現在は入管業務(VISA・在留資格)を中心とした専門事務所として、外国人の雇用・受け入れ、企業の国際人材戦略、在留手続のオンライン申請支援を行う。
企業・個人いずれのクライアントにも寄り添い、迅速・丁寧で負担の少ない手続きをモットーとする。
また、国際業務の経験を生かし、英語での各種案内・申請支援にも対応。
趣味: バイク(CB1300SB)、ツーリング、テニス、ゴルフ
English:
After working in Japanese and foreign-affiliated companies in the fields of scientific instruments, sensors, vacuum equipment, and chemical processing machinery, I passed the national Administrative Scrivener examination in 2020 and founded Tommy’s Legal Service Administrative Scrivener Office in April 2021.
My practice is specialized in immigration procedures—visa applications, extensions, changes of status, and online filings for both companies and individuals. I support employers and foreign nationals with fast, accurate, and stress-free application processes.
English guidance and bilingual documentation are also available.
Hobbies: Motorcycles (Honda CB1300SB), touring, tennis, golf
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